「人生フルーツ」 - Journal - YUKAKO YAMANAKA - 山中結夏子

YUKAKO YAMANAKA

「人生フルーツ」

2017年に公開された映画「人生フルーツ」。

当時、私の両親に教えてもらって、いつか観たいと思っていたのですが、DVD化やネット配信がされていない作品なので諦めかけていたところ、近所の映画館でアンコール上映をすることを知り三年越しの願いが叶いました。

舞台は、愛知県にある高蔵寺ニュータウンという場所の一隅。高度経済成長期に日本住宅公団のエースとしてこのニュータウン計画に関わった建築家の津端修一さんと、妻の英子さんのふたりが暮らす雑木林に囲まれた一軒の平屋の住まいです。
夫婦は「次の世代に残せるのは、お金ではなく、なんでも育つよい土」と、庭を日々耕し70種の野菜と50種の果実を育て、料理をし、英子さんは編み物や機織りの手仕事もしています。「衣食住」という人が生きる根幹になるものを大切にして穏やかに楽しんで、かつ強い意思のもと暮らしているふたりの生き方が、温かい映像と丁寧な言葉で描かれています。

見る人によってこの映画の感じ方や受け取り方は様々だと思いますが、日々、コツコツ、ゆっくりと、自然に寄り添って生きるふたりの暮らしが、まさにコロナ禍の今だからこそ大切にすべきことや自分の日々の暮らしのヒントになるようなものをたくさん教えてもらった気がして、しばらく映画の余韻が私の中で続いた作品でした。

枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
コツコツ、ゆっくり。
人生フルーツ。

映画の冒頭はじめ、90分のストーリーの節々で繰り返し読まれる、ナレーション 樹木希林さんの言葉は心にスーッと響いて残ります。

今月も各地でアンコール上映がされているようです。
http://life-is-fruity.com/theater/

「人生フルーツ」フライヤーの写真